海を越えてやってきたトレーラーハウス 〜前編〜

近年では国内で見かけることが増えてきたトレーラーハウスは、元々アメリカやヨーロッパで広く使われているものが、日本へ入ってきたことから広まってきたものです。
そこで、今回は欧米のトレーラーハウスと日本のトレーラーハウスの違いなどについてご紹介したいと思います。
※この記事は、前編と後編に分かれています。

1.海外のトレーラーハウスの歴史

アメリカやヨーロッパでは古くから「馬車」が人の移動や荷物の運搬に利用され、生活文化の一部になっていたことから、戦後の自動車の大衆化とともにレジャーやリゾートの手段のひとつとしてトレーラーハウスが発展してきました。 そのため欧米のトレーラーハウスは、移動販売用のキッチントレーラーなどもありますが、トラベルトレーラー(キャンピングトレーラー)や別荘用の豪華な内外装のパークトレーラーが主流となり発展してきました。 バカンスで何週間も休暇を取得する風習のある欧州では、バカンスシーズンのリゾート地や高速道路などで多くのトラベルトレーラーを見かけます。

欧米のトラベルトレーラー

パークトレーラー

約30年前から日本国内へトレーラーハウスが入ってきた当初もこれらのレジャー用やリゾート用のものが主流でした。 近年、国内で見かける店舗用や事務所用などの事業用途で使用されるトレーレーハウスは日本で独自に発展してきたものと言えるかもしれません。

ところで余談ですが、「トレーラーハウス」という単語は実は和製英語です。欧米の方に「トレーラーハウス」と言っても通じないかもしれません。欧米では上記のとおり、キャンプ、レジャーなどで頻繁に移動して使用するものは「トラベルトレーラー」、同じ場所に長期間定置して別荘や住居として使用するものは「パークトレーラー」と呼ばれています。

2.海外のトレーラーハウスの特徴

欧米には古くから馬車製造業者(コーチビルダー)が存在し、それらのコーチビルダーが現在はトレーラーハウスを製造しているケースも多いようです。
前述のとおりヨーロッパでは長期間のバカンス旅行でトラベルトレーラーが利用されることも多いため、普通乗用車で牽引できる比較的小型のトラベルトレーラーが多く、それらは頻繁に公道を走行させることが前提であるため欧州の車検制度規格であるEマーク制度(※)に対応し、ナンバープレートを取得しているものが大半となっています。

欧州のトラベルトレーラー

※Eマークとは:
EU圏内で流通する自動車部品に表示が求められる適合マークのこと。
EUでは自動車部品の流通において品質基準や環境基準を徹底するため、欧州自動車EMC指令に基づく認証の取得が義務付けられる制度。
日本もこのEマーク条約に加盟しており、Eマーク認証を受けて日本から輸出した自動車はそのまま欧州で流通させることができます。また、逆にEマーク認証された欧州製自動車は、そのまま日本で車検登録できます。

[Eマーク]
Eの横の数字は認証した国の番号
例)ドイツ 1、イタリア 3、オランダ 4、イギリス 11、日本 43など

アメリカ製のトレーラーハウスは広い国土を反映してか欧州製のものに比べサイズが大きいものが多くなります。
欧州と同様にレジャー等で使用するトラベルトレーラーにも多くの種類やサイズがあり、特に貨物用トレーラーに見られるセミ・トレーラのように第5輪方式で牽引する「フィフスホイールトレーラー」の種類が多いのも特徴です。

フィフスホイールトレーラー

また、別荘などで使用されることが多い豪華な内外装の「パークトレーラー」も多くの種類が販売されています。
これらはシャワー・トイレルーム、ベッドや家具、システムキッチン、冷蔵庫なども備えており、まさしく「動く家」ともいえるトレーラーハウスでライフラインを繋げればそのまま住居としても使用可能です。
ただし、アメリカの車検制度は日本や欧州とは異なり、FMVSS(※)という米国独自の安全規格で製造されているため、米国仕様のまま日本で車検を取得できるものは少なく、日本の保安基準に適合させるための改造が必要であったり、そもそも日本で車検が取得できるサイズを超過しているものも多く存在します。
特にパークトレーラーは車幅3mを超えるものが大半であり、サイズが車検サイズ(幅2.5m)を超過してしまいます。

※FMVSSとは:
アメリカ独自の自動車に関する安全適合基準で「連邦自動車安全基準」のこと。
欧州のEマークや日本の保安基準とは若干異なる基準であるため、米国製自動車を輸入し車検登録するには国内基準に適合させるための改造が必要になることがあります。

FMVSS写真

また、構造的な特徴としては、普通乗用車で牽引できることを前提にしているものが多い欧州製トレーラーハウスは、車軸位置が中心付近にあり、ヒッチ(牽引装置)部分への荷重を少なくし、牽引車側への荷重負担を軽減しているものが多いようです。 一方、米国製はピックアップトラックなどRV車での牽引を前提としているためか、牽引装置にも荷重が掛かるよう車軸位置がやや後方寄りになっているものが多いようです。

以上のように欧米製トレーラーハウスについてご紹介しましたが、日本国内で欧米製トレーラーハウスが大きくシェアを拡大できない理由のひとつとして、トラベルトレーラーのようにユーザーが自ら牽引して使用することを前提としたトレーラーハウスの場合、「けん引免許」の取得が難しいことが挙げられます。
また、パークトレーラーのように車検を取得できない大型トレーラーハウスの場合、運搬するには基準緩和認定と特殊車両通行許可の2つの許可を取得したうえで運搬しなければならず、それらの許可取得には申請から2~3か月を要すること、許可される期間の2カ月間以内であること、運行経路や運行時間帯が予め指定されてしまうことなど制約が多く、近年では多くの自治体の建築行政(建築指導課など)では「随時かつ任意に移動できる」ことが求められるトレーラーハウスとしては認められないとの見解を示すようになってきています。
つまり、申請から許可取得まで相当な期間を要することは「随時」(=いつでも)には該当せず、運行経路や運行時間帯が指定され、且つその運行も1回限りであることは「任意」(=自由に)に該当しないと考えられるようになってきています。

引用元

欧州のトラベルトレーラー

https://4travel.jp/travelogue/10131902

フィフスホイール

http://ttctrailer.seesaa.net/article/148208759.html

原案:中村
執筆:吉田
校正:藤澤

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