トレーラーハウスで電気は使える?トイレはどうする?
トレーラーハウスを利用する際には、一般住宅と同じようにライフラインが必要となります。内装や間取りを工夫してライフラインを使える空間設計も大事ですが、接続方法についてはトレーラーハウスならではのルールが存在します。このルールを守らずに利用していると、違法建築物となってしまいます。知らずに設置して後悔する前に、まずはこのコラムを読んでご準備ください。
■ライフラインの定義
まずは一般的な用語として、ライフラインとは何を指すでしょうか。下記に簡単にまとめてみました。
電気
近年では電気料金の度重なる値上げで話題になる、利用者にとってみれば光熱費の代表格とも言えるインフラです。主な利用としては、「照明機器」「エアコン」「コンセントを利用する電化製品」があります。これ以外にもオール電化のキッチンであれば、IHコンロを用いることもあります。
水道
「キッチン」「トイレ」「シャワー」の生活インフラです。給水に当たる水道以外に、排水となる下水道が必要です。市街地であれば問題ありませんが、山間部や過疎地であれば水道が行き届いていない場所もあります。
ガス
電気と並ぶ、エネルギーインフラです。ガス代も近年高騰しているインフラですね。主な役割としては「キッチン」「シャワー」などの温水を利用する際に必要となります。オール電化にしていれば、ガスを使わずに全ての熱エネルギーを電気で作り出せます。
電話
数十年前であれば電話回線を引き込んで固定電話を利用していましたが、現在では携帯電話・スマートフォンの普及、高速回線である5G環境の普及で、移動通信回線が一般的になってきました。インターネット回線も同様に、モバイル回線を使う事で固定回線を引き込む必要性が減少しています。
これらが主なライフラインと呼ばれるインフラです。それでは、これらのインフラをトレーラーハウスで使うにはどうすればよいでしょうか。その方法を詳しくご紹介していきます。
■トレーラーハウスにおけるライフライン接続の注意点
トレーラーハウスでライフラインを使おうと思った時、接続に気を付ける点が幾つかあります。
電気
新しい土地にトレーラーハウスを設置する際、まずは受電ポールを土地に設置して電線を引き込みます。その際、受電ポールにトレーラーハウス用の分電盤を設けて、「新規電力の開設」あるいは「既存電力の分岐」を行なっていきます。
注意点としては接続形態です。受電ポールから伸ばした電線に対して、着脱可能な電源コネクタを使用する必要があります。一方、トレーラーハウス側も同じく着脱可能な電源コネクタを取り付けて、お互いを接続させます。こうする事でトレーラーハウスの要件となる「随時かつ任意に移動可能」という状態を保つ事が出来る訳です。
この事を守らず直接結線してしまうと、それは移動可能な状態では無くなりトレーラーハウスの定義から逸脱してしまいます。必ず着脱可能な電源コネクタを使用してください。
水道
トレーラーハウスで水道を使用する場合、上下水道について検討する必要があります。以下にそれぞれの使用方法について記載しますが、設置予定の土地が市街化調整区域の場合には、そもそも下記の方法が可能かどうか、地方自治体(市役所の上下水道課など)へ確認する必要があります。
もう1つ大事な点として、電気と同様に手動で着脱可能な器具を使って接続する必要があります。具体的にはカムロックと呼ばれる接続金具を利用してください。通常の住宅と同じように施工すると、手動での着脱が不可能となってしまい、建築物扱いとなってしまいます。十分にご注意ください。
-上水道
設置する土地の近辺に本管(配水管)がある場合には、給水管を引き込む事で上水道が利用可能です。給水工事は本管から設置場所までの距離によって金額が変動しますので、距離によっては高額になる恐れがあります。
問題は近くに本管が無い場合です。この場合には井戸水を使うという選択肢もあります。ただ、井戸は下記の問題点があります。
・地下水のある土地かどうかに左右される
・飲料を想定する場合には、水質検査を入念に行う必要がある。(検査の結果、飲料に不適格の場合あり)
・大量に使い続けると、井戸が枯れてしまう場合がある(水源による)
井戸を掘削するコストも必要ですので、詳しくは掘削業者へご相談ください。
-下水道
下水道はまず、共用地域の対象となっているかどうかを確認します。対象の場合には下水道引き込みを行ないます。対象でない場合には、浄化槽を埋設するなどして適切な下水処理を行ないます。汲み取り式については、比較的安価ではありますが、臭いや定期的な汲み取り作業が必要です。よほど選択肢が無い場合を除いては、あまり現実的では無いと言えます。
ガス
トレーラーハウスの設置検査要件に基づき、ガスはプロパンガスを使用します。都市ガスは容易に着脱が出来ない事から、使用する事は出来ません。ガスボンベはトレーラーハウスそのものに積載しても良いですし、レンチで簡単に着脱出来る構造にしておけば、地面に置いても良いです。
電話
通信に関しては、モバイル回線の普及に伴ない、ワイヤレスでも十分利用が出来ます。業務上必要であれば光回線などを引き込む場合もあるかと思いますが、その際もアダプタが手動で着脱出来る構造のものを選んで取り付けるようにしてください。
■トレーラーハウスのオフグリッド化
近年注目されているオフグリッド(ライフラインの独立化、自給自足)、トレーラーハウスでもオフグリッドのシステム構築が少しづつ進んでいます。具体的には「太陽光パネルを搭載して自家発電」、「循環水を利用したトイレ」、「モバイル通信環境」を組み合わせた形となります。
それぞれに技術が進んでおり、個人利用であれば十分実用的です。ただ、当社のトレーラーハウスのように災害支援時の大人数での利用を想定するとなると、完全オフグリッド化にはもう少し時間が掛かりそうです。当社も多くの人に役立つオフグリッドトレーラーの研究を続けていきます。
■まとめ
今回はトレーラーハウスのライフラインについて解説しました。いずれの方法においても、「手動で着脱できる構造かどうか」を、しっかりと遵守してください。正しい方法で設置する事で、トレーラーハウスは便利に利用出来ます。不明な点がありましたら、購入を検討しているメーカーや業者へ、しっかりと確認していきましょう。
原案:中村
執筆:齋藤
校正:野坂